駒落ち       文  袖太郎
 7月1日より袖沢は入渓禁止なので、入り込むには二通りしかない。ひとつ白戸より山越え、もうひとつは桧枝岐より駒ケ岳越え、どちらを取るかは体力しだい。南沢の山越えもあるが、あまりメリットはない。というわけで駒ケ岳落ちを2001年7月30日実行。銀山湖の周遊道路を朝4時に走りこむ。ここで注意点。無理をすると桧枝岐に着いたときは「はきそう」になること。桧枝岐の六地蔵を越えてから左折。きれいなトイレを越えていくと、車の駐車が増えてくる。奥まで進むと止める場所とUターンができなくなるので注意。

【水のみ場まで】  車止めを確認してから出発。2〜3分下ったとこからの出発なので準備運動になる。駒ケ岳登山道の階段を7時発。険しいのぼりを20分。そこから水のみ場までは約1時間半。3日分の食料とテント持参なのでかなりの重量。長男は食料と荷物を割り振る。歩きは老人並みの速度。ほとんどの登山家に抜かれる。そして二人は異質の登山家、みんなの目が冷たい。足元もよくすべる。何せ渓流シューズである。水のみ場で大休憩。私は水汲みには決していかない。何しろ年なのである。若者の仕事。この気持ちは登った人しかわからない。その後、とぼとぼと2時間の山登り。岩魚岩魚・・と言いながら我慢する。急に景色が開ける。風が変わる。高山帯の植物が増える。道が木道となる。美しい、きれいだ、この世の楽園だ。しかし、ここから駒の小屋までがまた死にそう。人生楽ありゃ苦もあるさ。苦ばっかし。1時間半の地獄。駒の小屋では昼食はとらない。何しろ混んでいる。ここで12時。

【いよいよ駒ケ岳落ち・・・。】  駒の小屋を後にすると、木道の回りには高層湿原が点在する。その、池塘の回りにはハクサンコザクラがお花畑を作る。酸度が強いせいかピンクというより紫色に近い。そしてワタスゲやモウセゴケが下地を成す。その木道は一気に駒ケ岳山頂を目指す。しかし、道は山頂を左に巻き込む。しばらく喘ぐと駒ケ岳を横切る道に出る。山頂口を後にしてさらに木道が続く。いよいよ中門岳を目指すわけである。山頂口から一度小さな尾根を越えた所で大休憩。ここで昼食。時間は1時。食事をしながら人の動向をうかがう。なにしろここから一気に落ち込むわけである。標高は2000m落ちるのは標高差200mたいしたことはない。ただ人の目がきになるだけ。その切れ目に笹薮のなかに飛び込む。姿を隠してしまえばこっちのものである。へん・・・。後は細い沢沿いををのんびり下る。雪渓の解けた水が心地よい。1時間も下ればいっぱしの沢である。そこからは本格的な沢くだりとなる。一応、心配なので捨て縄10本と9mmザイル30mを持参。昨年の経験ではルートさえ間違わなければ必要なし。御神楽沢、袖沢の奥は人には優しい。
待ってました岩魚つり・・・。】 小沢を下ると越せない淵が出るが、左岸を下る。途中を覗くとハーケンが一本打ってある。そこから約30分で電光型三段の滝に出る。とんじろホームページ、釣り場の風景後ろから三番目である。昨年は山椒魚捕りの人が巻き道を教えてくれた。右岸を巻くとすぐに小沢に出る。下ると上流に三段の滝が見える。これが御神楽沢の本当の魚止めである。ここからはまず竿釣り。O社岩魚6mでオニチョロ釣り。30cm級の入れ食い。あきてきたので私はテンカラ、長男は渓流のルアー釣り。テンカラでは腕が悪いのでやや入れ食い、長男はなななんと大入れ食い。むしりとるようにルアーで勝負。これがまた面白い。やめれない・・うふぁうふあである。どこからでも岩魚は飛び出す。ちぎっては投げ、ちぎつてはリリースである。結局何匹釣ったかわからずじまい。夕食用に三匹確保。これはすべてお刺身である。しかし、ここの場所が桃源郷かというと違うのである。では桃源郷は・・。次回のお楽しみ。  さてルアーは3gのミノー、色は一応三色持参。ラインは2〜4ポンド。リールは000マスター1000の何とマグネシュウム使用う〜ん軽い。
【いよいよ桃源郷・・・?。】 三段の滝から一時間ほど下るとムジナクボ沢と出会う。その間、危険な滝は一本のみ。出会いから30分で核心部、御神楽の大滝、ホームページ後ろから2番目となる。高さは定かでないが、10〜20mの間だと思う。見た目は難しそうだが、よく見ると滝近く左岸より楽に昇降ができる。あわてずに上り下りすればまったく問題がない。しかし、しかし・・・この滝つぼには岩魚はいない。なぜか?下流廊下帯にも魚影を見ず。さらに下ること30分。二段の中滝に出会う。ルートを間違わなければ上段の滝は楽に越せる。下段の滝はつぼを持ち、覗くと一見降りられそうもない。しかし、左滝口に近づくと何とか降りられるものである。ただ水量が多いとかなり厳しい山巻きとなる。左岸より上手に巻きたい。その下より大雪渓が続く。今年は崩れていたので、隙間を抜けさせてもらった。そのから約20分。いよいよ釣りの核心部となる。300〜500m滑滝、続いてゴロー帯。滑滝のつぼを覗くと、ゆらりゆらり40cm級が泳いでいる。オニチョロをゆっくり流すとすぐに飛び出る。釣れそうもない場所からもミノーに飛び出る。遊ぶこと2時間。時間はあっという間に過ぎる。そして下品なほど釣れると言うのではなく、理性的に釣れる。ようは楽しめるということである
【安心できる場所は無い桃源郷・・・・!】 この長い滑滝前後が岩魚つりの核心部だと思える。ただ桃源郷を想像すると、開けた安心できる釣り場が頭に浮かぶ。しかし、ここの場所は景色こそ美しいが人を拒む凄みがある。岩魚のみ安心できる場所なのであろう。ここより下流は二段の大滝、上流も大滝と人を寄せ付けない。御神楽沢ひとまたぎは、ここよりかなり下流部である。ひとまたぎからミチギノ沢は近く、袖沢から来た釣り人は二段大滝で釣りを終える。ここまでが下流の釣りであろう。上流の釣りは滑滝である。雨天時はここから一目散で大滝を越える。テント場は大滝上が良いだろう。トンジロまで戻る気なら滑滝上流部にいいテント場がある。経験を積んだ渓流師・源流師ならどこでも寝れる場所を見出すことができよう。何度も書くが「人に優しい沢」である。
【大物はいるのか?】 どんな釣りでも問題にされるのは、数ではなく大きさである。御神楽沢、別名奥袖でもそれは変わらない。今回の釣りでの大物は?やはり滑滝下よりの40cmである。ではそれ以上はいるのか。奥袖には大鳥よりの溯上をを防ぐ滝が数多い。第二の取り入れリ口上流でさえ6個の大滝を持つ。しかし、居つきなのか、溯上なのか判断に困ることがある。第二取入れ口すぐの大滝、釣り人は左岸より巻いて通る滝で、5〜6年前○○さんが55cmと52cmを上げている。私もかなり多くの大物を上げている。それは南沢取水口より溯上したとしか考えようが無い。今回も二段大滝の廊下帯で50cm級を数本確認している。釣れこそしなかったが、主は存在するようである。御神楽沢に入り込む釣り人は、あまり報告を好まない口の固い人が多い。言うことはただ「釣れた」だけである。それらのことから考えるとかなりの大物は釣ることができよう。いや、釣れるのだ。
【帰路につこう!】 さて、帰路につくことにしよう。雨天でなければテントは片付けやすい。雨天時でも大型タプー(○山荘製の大型スパーライト3.4×4.5 920g)があれば問題ない。山より持ち帰るものはごみだけなので荷物は減るはず。しかし、荷物は肩にずっしりかかる。帰りは駒ヶ岳直下までは楽である。いろいろな釣り雑誌では山頂付近の笹薮には泣かされるとあるが、私は一度も苦労したことが無い。長くても笹薮を10〜20分で抜けられる。たぶん駒ケ岳を頂上方面を目指した者が迷い込んだのであろう。直下からは右手方向、中門と駒ケ岳の中間左方向を目指せば間違いない。右手に尾根を仰ぎ、枯れ沢を登っていくと突然、お花畑に飛び出す。直下から約一時間〜一時間半で木道に出る。駒の小屋でのんびりと昼食にする。10分遅れで二人の沢屋が登ってきた。根曲がり竹、笹薮はひどかったと話している。迷子だ迷子だと叫んでいた。あまり釣りもせず、急いで登ってきたらしい。私たちは駒の小屋を渡る涼しい風をうけながら、そんな話を聞いていた。なんか遠い話を聞いているようだった。その二人より、早く下山した。ただ、水のみ場まではかなり遠かったように思い出す。桧枝岐では時間が遅かったが、おいしい蕎麦を食べることができた。暗くなってから周遊道路を走り、銀山の露天風呂で疲れを癒した。いつ来てもこの風呂はいい。最高だ。何がいいって、湯が流れぱなし、銭湯代はせがまず、石鹸が使えず、明かりも無い、これ以上の贅沢はない。ここまでが顛末である。問題点や用具についてはまた、別記したい。