2008.04.03
大鳥岩魚-その希少性と最近の傾向-その2(文’07.9Dr.Y)
イワナの巨大化のメカニズムについては、「とんじろ」のホームページでも以前記したとおり、大型化しやすく、降海型(降湖型)になりやすい遺伝子をもつ♂と♀のペアが交配し、産まれた稚魚うちの一部が銀化(スモルト化)して降海型になり、湖に下って、昆虫食から魚食に変わる。その結果、若令より急速に大型化し、成魚、老成魚になって、50cm~80cmクラスが出現すると考えられる。全国的にも貴重なイワナの血統である。
「とんじろ」のお客さんの一つの壁は50cmといわれるが、近年は前述のような理由で
必ずしも尊敬されるサイズではなくなったようである。このサイズでも♀は丸顔であり、♂でも下顎の突き出しはわずかで、まだまだ成長を予感させられるプロポーションで、さしずめ沢イワナでの28cm~30cm位の形をしている。しかし、55cmオーバーとなると歴戦の大鳥フリークでも年一回、幸運な一匹にまみえることができるかという稀少さである。
♂の下顎が突き出して上顎に食い込む、いわゆる「タキタロウ」タイプが出現し、尾ビレの後端の切れ込みがなくなるタイプが出現する。また熱帯魚のアロワナでいわれる「スプーンヘッド」タイプのワシ型の頭部で体高の高い魚も多くなる。時には♀でも下顎が突き出し、♂と見違うようなワシ型の顎に太った魚体のものもあり、沢イワナでの30cm~36cmのプロポーションをしている。
この傾向は、56~59cmと著明になり、昨年、本年の放水口のトロフィー60~61cmで究極の型を見るようである。当然釣れる頻度も劇的に低下し、60cmオーバーは20年かかるといわれるのも納得せざるを得ない。
魚類は哺乳類と異なり、生き続ける限り体長が伸び続ける生物学的特性があるが、ある年齢もしくはサイズから、その伸長度に著しい低下がみられるのも、また事実である。イトウのメーターオーバーが稀少なのも同じ理由であろう。
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