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2008.04.25

-日本産イワナの分類と現状-その2 (文’07.9Dr.Y)

アメマスは東北地方から北海道にかけて分布する降海型のイワナで白斑が大きく、ロシアのものではメーターオーバーのものとあって釣り雑誌の話題となっている。道南地方では海アメマスと呼ばれて、秋から春にかけて海岸からルアー・フライで釣るのが流行りである。秋には遡上したものが河川で釣れ、私の実績ではイトウ釣りの外道の65cmがあるが体型が細く、大鳥イワナとは似て非なる魚の印象であった。

エゾイワナはアメマスの陸封型で、東北地方以北のイワナはこれに該当する。白斑は大きめで、腹は黄色いものが多い。側面の黄色はほとんどないか、全くないのがニッコイワナとの相違点である。ダム湖で釣れるものは50cm前後のものもあるが、近年は東北地方も場荒れが激しく、30cmは良型である。三陸地方にはゴギと間違うような頭頂斑をもつものもある。私の最大も岩手の40cmである。

ニッコウイワナの典型的なものは関東と中部地方日本海流入河川のもので、アメマスより白斑が小さく、体側の黄色が目立ち、体高が高くなる傾向がある。地域変異が大きく、利根川水系のものは朱色の体側のものもある。佐渡や庄内地方ではアメマスとの境界型といえる個体が分布し、一部降海型も知られている。

私達が奥只見で釣るイワナも、このニッコウイワナで、しかもかつて只見川・阿賀野川水系にダムがなかった頃、地元で「ノボリイワナ」と呼ばれていた降海型の血統が残っているため、ダムに降りた魚が大型化すると考えられる。

ヤマトイワナは富士川以西の太平洋流入河川の最上流部に生息するイワナで白斑が小さく黒めの体色に朱黄色が目立つ特異なイワナで、一説では、オショロコマと共通の祖先から分化したといわれる。富士川、大井川、天竜川、木曽川、長良川などは、アマゴの生息域より上流にわずかに残存しているが現状で、放流されたニッコウイワナとの混血が疑われることも少なくない。

河川ごとのバリエーションも大きく、時にはナガレモン化したイワナが釣れる小沢もある。サイズは20cmもあれば大型で、天竜川支流で私が尺越えのヤマトイワナを釣ったときは、そのいかつい形相に思わずひるんだほどであった。生息域は自然破壊が著しく、今後絶滅が心配される系統である。

紀伊半島源流域に生息するキリクチはヤマトイワナの変異とする見方もあるが、朱点が目立たず、全体に茶色のイワナで、日本産では最も絶滅に瀕しているイワナといわれる。かつての生息地は自然破壊とアマゴの放流で消滅し、わずかに残った生息地の大半は禁漁区に指定されて、近年その生存に関する報道すらない「幻のイワナ」といえる。私もかつて釣り可能な区域で、キリクチを狙ったことがあるが、剣谷続きで落石も多く、ついに一匹の魚影も見ないまま退散した想い出があり、私にとっても日本産イワナで唯一釣っていないイワナとして残っている。

・・・つづく

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